複数人を対象とした療法の種類・特徴(当事者のみと当事者以外を含む場合両方)

今までご紹介したカウンセリングは、1対1で行うことから、人に言えずに抱え込んでいた悩みを

打ち明けたり、自己開示しやすい点がメリットです。

カウンセラーは自身の深い面を知っている良き理解者、「味方」である一方、孤独感が強い人にとって

は自分と異なる存在と感じ、物足りなさを感じる場面もあります。

「こんなに辛いのは自分だけではないか」と感じる程の果てしない孤独感を和らげたい、「仲間」

「同士」を見つけたいと思っている方は、本記事のアプローチをお試し下さい。

なお、こちらに挙げる複数人を対象とした療法には、当事者のみのもの(集団精神療法)と、当事者に

加え家族等を含めたもの(集団精神療法以外)の、2つに分かれます。精神疾患を抱えた家族に対し何

かできることはないかと考えられている方、支えている中での苦しみを抱えられている方は、集団精神

療法より下に記載するアプローチをご検討下さい。

集団精神療法 

治療者対患者以上に患者同士の交流に重点を置き、集団のもつ治療促進的な力(支える力、育む力)を

活用する精神療法です。言語的交流を通して自己理解を深める力動的精神療法・認知行動療法や、同じ

体験をもつ人たちが互いに支え合うグリーフワークを行います。また、集団で対人交流技術を習得した

り、心理教育を学ぶだけでなく、運動や芸術などのアクティビティ活動を行うなど、様々な手法があり

ます。

  • 例)デイケア

自立した日常生活や社会参加・復帰を目的とした、日帰りで様々なプログラムを実施する通所施設。

特徴

精神科デイケア

精神病院等に併設されており、リハビリテーションを行う。

作業療法士・精神保健福祉士や臨床心理士だけでなく、医師や看護師などの医療チームが同じ集団に

関わるため、診察の状況に応じた連動性があるプログラムを受けられるメリットがある。

  

デイケア事業(通称:保健所デイケア)

 市町村(精神保健福祉センターや保健所などの公的機関)で実施している、精神障害をもつ当事者が

回復を目指すための社会的リハビリテーション資源。 

通院医療機関を特定した制限を行っておらず窓口が広いため、気軽に利用しやすいメリットがある。

 

対象

向いている人     :対人関係を築き、孤独感を和らげたい人。生活リズムの改善を図りたい人。

           :就労に向け対人関係の実践を積み社会性を身に着けたい人。

向かない可能性のある人:人に対して強硬な姿勢をとり、攻撃してしまう人

            (病気等で一時的に攻撃的になっている場合も含む)

ポイント

担当職員に専門的な相談ができ、自分の必要に応じたプログラムに参加する中で、精神疾患に苦しむ

仲間とのかかわりにより相互作用が生まれることで自己洞察を深められ、孤独感が和らぎます。

適切なコミュニケーションを学び社会性を獲得していける反面、自分の苦手な人ができてしまうと通う

気が進まなくなってしまう場合もあります。そのようなメンバー同士のかかわりにも専門家が介在して

くれるので安心感があり、自分の意見をアサーティブ(伝えたいことを明確)に伝えられる経験を積

み、自身で課題を解決する方法を練習しながら学んでいけるのが大きなメリットです。

就労プログラムが用意されている施設が限られているので、社会性に既に自信があり、就労に向けた

準備をしたい人は、施設のプログラム等を事前に調べて自身のレベルに合う所で実践を積んでいきま

しょう。

自助グループ

特徴

自助グループとは生きていく上でのなんらかの困難や問題、悩みを抱えた人が、 同じような問題を抱え

た人や家族、遺族らと自発的なつながりで結びついた集まりのことです。 自らの課題を素直に認め、そ

の上で自らの意志のもとに悩みを直視し、自分を変化させていくことが大きな特徴です。

心身疾患・障害、アルコール等の依存症、セクシャルマイノリティ、犯罪被害、労働問題、宗教問題、

ひきこもりなど、自身の精神の症状に起因する悩み・問題にある程度目星がついている場合に参加する

と役立ちます。

自助グループでは「分かち合い」という場があり、同じ悩みをもつ仲間の前で「言いっぱなし聞きっぱ

なし」というルールのもと自分の話を聞いてもらいます。

誰にもわかってもらえないと思っていた悩みを理解してくれる仲間との出会いによって、現在抱えてい

る不安感や孤独感が軽減したり、自分だけでは気づかなかった自分の問題点、どこでつまづいているの

か等を、仲間の話によって自覚していく中で、回復に繋がることもあります。一方、患者同士の

コミュニティということで、悩みに早急に正確な回答が欲しい方には不向きと言えます。

今の精神的な孤独感・不安感を和らげる心の拠りどころかほしい、同じ悩みをもつ仲間に自分の気持ち

を聞いてもらいたい方にはおススメです。自分の意見に同意も反論もされないため、安心して自分の抱

えている想いを外に打ち明けられることが、友人と話をすることとの大きな違いであり、特徴です。

例)AA(アルコホーリクス・アノニマス)NA(ナルコティクス・アノニマス)GA(ギャンブラーズ・アノニマス)DA(デターズ・アノニマス)OA(オーバーイーターズ・アノニマス)SA(セクサホーリクス・アノニマス)EA(イモーションズ・アノニマス)CoDA(コーダ Co-DEPENDENTS ANONYMOUS)ACA(Adult Children Anonymous)

対象

向いている人     :孤独感を和らげたい人。居場所が欲しい人。

           :相手の反応を伺って自分を出せない人。

向かない可能性のある人:専門家に指示を仰ぎたい人。悩みに対し早急に正確な回答が欲しい人。

           :相手の影響を受けすぎてしまう人

       (仲間の語る辛い経験を自分事のように真に受けやすい人には、刺激が強い場合も。)

ポイント

同じ悩みをもつ仲間との空間・時間を共有することで、自分の居場所を感じられ、安心感が芽生え

す。友人に相談する場合、嫌われたくないという思いや「このようなことを言ったら良くないだろう

か」等色々考えてしまい、正直に話すことができない場合も多いと思います。ですが、自助グループの

分かち合いは、正直に、例えば、恰好悪い、嫌な、ありのままの自分を出してもそのまま受け入れても

らえるのです。自分の気持ちを正直に伝える練習ができるだけでなく、仲間の正直な気持ちを聞く中

で、今まで自分一人では気づかなかったことに気づくことができます。自分で自分を受け入れられなく

とも、仲間の話だと素直に受けとめられ、自然と自身の言動を振り返る中で、自分のネガティブな言動

を改めようという学びも生まれます。専門家がおらず、患者の当事者同士で高めあう形なので、参加も

自由な分、一定の自主性が求められます。また、同じ自助グループでも、会場毎に雰囲気が異なる

ため、合う合わないを決めるのに一定の時間がかかります。複数の会場を経験しながら少なくとも6回

程通ってみて、自分に合うグループを見つけてみて下さい。

家族療法

特徴

周囲の環境・状況等が大きな要因となり精神的な症状に繋がっている場合、当事者のみの回復だけでは

限界があります。家族にアプローチすることで症状や問題行動の解決を図る、当事者の家族自体に変化

が求められる場合に適した心理療法です。治療の進め方として、問題の原因を突き止めるのではなく、

家族の関係性やシステムをより良い形へ修正していく形であることに注意が必要です。

原因を突き止めてその家族を糾弾したいという考えをもっている方にとって、この療法は苦痛になる可

能性があります。

対象

向いている人     :機能不全家族

      (家族のコミュニケーションが不健全、もしくはコミュニケーションがとりにくい家庭)

向かない可能性のある人:家族が非協力的で多忙な場合。

           :家族関係が破綻しており、家族と空間を共有すること自体が、

            当事者のストレスになる場合。

ポイント

患者自身を責めることなく、問題に対する視野を広げ複合的にアプローチできるところが他の療法にな

いメリットです。「家族全体の問題」という視点を共有することで家族間の偏見をなくし、家族間の関

係性が改善される可能性もあります。今まで理解を得られなかった家族が理解者になることは、精神的

な安定に繋がるだけでなく、問題も解決に向かいやすいというのがメリットである一方、既に家族の関

係が破綻しており、特に患者を責めるような家族間の意向が抜けない場合は、同じ時間を共有すること

で患者のトラウマの活性化に繋がり、患者の症状を悪化させる懸念があります。まずは自身の家族の状

態を客観的に把握するために、家族療法が効果的な状態・状況か否かをカウンセラーに相談してみる

ようにしましょう。

家族のグループワーク(家族会他)  

精神障害者を家族にもつ人たちが互いに支えあう家族会や、同じ病気を経験した仲間たちが運営する当

事者会があります。また、家族を対象とした自助グループや、自助グループの中でも、特定の問題を抱

えていない人でも参加できるオープンミーティングなどもあります。仲間と悩みを共有することで、

自分は一人でないと感じ、日々生活していく上で大きな支えになります。

  • 例)家族会

特徴

精神障害者を家族にもつ人たちによる、相互支援・学習・社会的運動を柱とした会お互いに悩みを

共有し、分かちあうことで助け合い、連携しながら学び、知見を広めて、安心して生活できるための活

動を行う。当初統合失調症の方のご家族が中心だったものが、現在は、うつ病や双極性障害、発達障

害・知的障害等様々な精神疾患のご家族が参加している。家族会にはいくつかの種類があり、病院を基

盤とする「病院家族会」や、地域を基盤とする「地域家族会」、近年では有志が結成した会もあり、

内容も多様化している。(※ここではブログの特徴から精神疾患を取り上げましたが、家族会の中に

は、認知症やアルコール依存症を対象にしているものもあります)

対象

向いている人     :積極性のある人。自己開示が得意な人。

          (※自己開示せずとも参加可能で、仲間の話を聞くだけで癒されることも多い)

向かない可能性のある人:参加を検討している家族自身が精神疾患を抱えている場合。

ポイント

精神疾患を抱えた方を支える家族は、他に悩みを打ち明けにくいと感じ、自身のことは二の次で、気持

ちを抱え込みがちになってしまいます。今まで抱え込んでいた気持ちを、同じ悩みを抱える人々に共有

し、ご自身の精神的な支えを得ることが患者を支えることに繋がります。また、家族としての困りごと

を話し合う中で、他の家庭が実践して良かったことを取り入れることができる等、具体的な問題解決に

繋がることもあります。専門家を呼んで病気や薬物治療、社会資源、福祉制度などの勉強会をして、同

じ悩みを抱えた仲間と理解していくことで、日々の生活を楽にできます。行政などへの要望・働きかけ

は、主に家族会の運営側が行いますが、家族として得た知見を活かし家族相談を行うところもあるよう

です。会によって内容が異なるため、 「お住まいの都道府県 家族会」で検索してご自身に合う会を探

してみましょう。

※公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)は、精神障がい者家族の全国組織で、

各都道府県にある家族会の関連団体をサイトにまとめているのでご参考まで。

以上が個人以外を対象にした療法となります。

自分の悩みを一人で抱えているだけでは、解決に向かうにも限界があります。

よりパーソナルな問題は個人のカウンセリングで、共感してもらいたい時は複数を対象としたものを利

用する等、自身の状況・状態に合わせてカウンセリングを賢く使い分けすることで、生きていく上での

不自由さを一つずつ軽くしていきましょう。

カウンセリングの場に行くことは最初とても勇気が必要かもしれませんが、ご自身の溜め込んでいた気

持ちを外に吐き出すことで、確実に楽になります。

費用が高いことがネックになりますが、自立支援制度の範囲内で受けられるカウンセリングや、

生活保護受給者への補助制度もあります。

ご自身が対象になる制度がない場合、金銭面でカウンセリングを受けられない方に向けて、

自分のためにできるセルフケアの方法も後々ご紹介できたらと思います。

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